
【第九回】その「頑張り」実は成約を逃しています。プロが教える商談を潰す「緊張の罠」
商談やプレゼンの大一番。
「絶対に成功させなきゃ」「失敗は許されない」
そう気合を入れて臨んだのに、なぜか相手の反応が薄く、成約を逃してしまった……。
そんな苦い経験はありませんか?
もしかすると、その「頑張り」こそがお客様との間に見えない壁を作っているのかもしれません。
私は普段、プロのマジシャンとして活動する傍ら、企業向けのコミュニケーションセミナーなどでお話しする機会があります。
そこでいつもお伝えしているのが、マジックの世界にも通じる「緊張と緩和」の秘密です。
今日は、あなたの商談の空気をガラリと変えるかもしれない、ちょっとした視点の魔法を共有します。
指一本でわかる「商談を潰す思い込み」
セミナーでは、皆さんにこんな簡単な実験をしてもらいます。
私の人差し指を立てて、「今からこの指を倒そうとするので、倒れないようにしてくださいね」と伝えます。
すると、ほとんどの方はどうするか。
グッと力を込めて、必死に「耐えよう」と踏ん張るのです。
実はこれこそが、「緊張している状態」の正体です。
「倒れないように(=失敗しないように)」というひとつの指示に意識が向くあまり、視野が極端に狭くなり、体がガチガチになってしまっている状態なんですね。
商談の場でも、これと同じことが起きていませんか?
「ちゃんと話さなきゃ」「上手くクロージングしなきゃ」と踏ん張ることに必死になり、身動きが取れなくなっているのです。
感情は「鏡」のように伝染する
私がかつて、スペインでマジックを学んだ際、とても大切なことを教わりました。
それは「感情は伝染する」ということです。
こちらが「絶対に失敗できない」とガチガチに緊張して力を込めていると、その力みや余裕のなさは、言葉にしなくても不思議と目の前の相手に伝わってしまいます。
お客様は、自分の心を映す鏡のようなもの。
売り手が緊張して踏ん張っていれば、買い手も無意識のうちに緊張し、居心地の悪さを感じてしまうのです。
逆に、表現者であるこちらが緊張の糸を緩め、心からリラックスしてその場を楽しんでいれば、お客様も同じようにリラックスして心を開いてくれます。
完璧な説明をしようと頑張るよりも、まずは自分自身が「緊張の枠」から抜け出すことが、最高の商談の空気を作る第一歩になります。
「倒れなければ、何をしてもいい」という自由
では、「緊張していない状態」とはどういうことでしょうか。
もう一度、指を倒そうとする実験に戻りましょう。
ここで心がリラックスしている人は、ただ真っ向から耐えるだけではありません。
スッと指を引いてみたり、押される力をかわして隠れたりするのです。
そう、「倒れさえしなければ、何をしてもいい」のです。
それに気づけず、ただ踏ん張ることしかできなくなるのが、緊張の恐ろしいところです。
商談の本来の目的は「目の前のお客様と良い関係を築き、価値を届けること」のはずです。
台本通りに一言一句間違えずに話すことが目的ではありません。
「倒れない(=目的を見失わない)」ことさえ守れば、もっと自由に、柔軟に会話のキャッチボールを楽しんでいいのです。
おわりに
いかがでしたか?
「倒れないように」と一生懸命に踏ん張ることは、決して悪いことではありません。
しかし、その思い込みが、かえってあなたの魅力や柔軟性を奪い、大切なご縁を逃しているとしたら、とてももったいないですよね。
次に大事な商談に臨むとき。
「あ、いま自分、必死に踏ん張っているな」と客観的に気づけたなら、それはもう、緊張の魔法が解けかかっている証拠です。
さあ、あなたは次の現場で、どんな自由なステップを踏み出しますか?

