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マジシャン林王子のブログ

~Maestro Juan Tamariz episode 0 ~ 見えなくてもマジックは伝わる

~Maestro Juan Tamariz episode 0 ~ 見えなくてもマジックは伝わる

更新日: 2026年8月19日 09:29

その時、本当にすごいものを見た。

2011年のFISM Asiaは、アジア地域のマジシャンたちが競うFISM公認の国際マジック大会で、2011年12月に香港で開催された。

大会ではコンテストだけでなく、世界的なマジシャンによるガラショーやゲスト出演も行われる。

国際色の非常に強い大会であり、優秀な出場者にとっては、世界大会FISMへとつながる重要な舞台でもあった。

そんな世界各国からプロ・アマを問わず、多くのマジシャンが集結していた大会の最終日。

ラストを飾るガラショーは、一般のお客さんも含めて1000人以上を収容できる、とても大きな会場で行われ。しかも、客席の約3分の1がマジシャン。

考えてみれば、かなり異様な空間である。

そんな第一線で活躍するマジシャンたちと、一般のお客さんの両方を唸らせる豪華なゲストたちが、最後のショーを飾っていた。

心配になるほどの盛り上がり

当然、そのショーは凄まじかった。

トリ前ですら、ボーリングの球が宙を舞い、ジャグリング行い、火を吹き、照明と音響を自在に操る。

とにかく、とてつもない迫力で会場は大熱狂。

大トリ前だというのに、ついにはスタンディングオベーションまで起きた。

僕は思った。

「トリ前でここまで盛り上がって…一体、大トリはどうなってしまうんだろう?」その時だった。

照明と音が、

ピタッ――

と消えた。

暗転した会場の中、司会者の声だけが響く。

「それでは皆様、ご紹介しましょう。ホアン・タマリッツ!」

ものすごい歓声と拍手。

その中をたった一本のピンスポットに照らされて登場したのが、マジック界のレジェンド、ホアン・タマリッツ氏その人だった。

1000人を魅了した片手に収まる魔法の道具

僕は考えた。

人が消えたり分裂したりするイリュージョンですら小さく見えてしまうほどの大ホール。「こんな大きな会場で、一体どんなマジックをするんだろう?」

しかし、彼が手にしていたのは――

どこの家庭にもある、ごく普通のトランプ一組

「そんなバカな!?」

「見えるはずがない!」

「こんな大きな会場で?」

その瞬間、僕にマジックを教えてくれた先生方の話が蘇った。

「昔のレジェンドたちのマジックはすごかった。スクリーンもプロジェクターもない時代に、手元で行うマジックを大ホールの観客に向けて演じていたんだから」

正直、僕はどこか眉唾だと思っていた。

先生方は、その姿を実際に目にしていたのかもしれない。けれど、僕がマジックを始めた頃には、名だたるレジェンドたちの多くはすでにこの世を去っていた。

残っているものは文献や口伝。

良くても、わずかな映像資料だけ。

「本当に、そんなことができるのか?」

ずっと、そう思っていた。

しかし、その疑問への答えが、その日、目の前にあった。

魅せるそして伝える

1000人以上のマジシャンと一般のお客さんを引きつけ、魅了し、笑わせ、そしてどれだけマジックが素晴らしいものなのを伝え、拍手喝采を巻き起こすタマリッツ氏の姿。

そして、いつの間にか肉眼では見えるはずもないほど小さな「選ばれた一枚のカード」が当たったことに興奮し、席から立ち上がり、夢中で拍手と歓声を送っていた。

見えていないのに、そこで起きているマジックがはっきりと伝わっていた。

そして、その場にいる1000人以上の観客が、一組のトランプによって同じ時間を感情を共有していた。

僕が学びたかったのは、これだ。

これしかない。

そう思った。

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